第34回年次大会(2025年)大会プログラム
 
日時: 2025年3月1日(土)12:50~17:55
場所: 文教大学越谷キャンパス
  〒343-8511 埼玉県越谷市南荻島3337
  14501教室 受付、書籍展示、総会、開会式、シンポジウム、研究発表第3室、閉会式
  14502教室 研究発表第2室
  14503教室 役員会、懇親会、それ以外の時間は会員控室
  14504教室 研究発表第1室
 
大会運営委員長: 川﨑 修一(日本赤十字看護大学)
大会運営副委員長: 関田 誠(国士舘大学)
大会運営委員: 奥井 裕(和光大学非常勤)
加賀 岳彦(日本女子体育大学)
齋藤 章吾(弘前大学)
佐藤 亮輔(北海道教育大学札幌校)
島野 恭平(埼玉県立春日部工業高等学校)
鴇﨑 敏彦(日本獣医生命科学大学)
松本 恵美子(順天堂大学)
森景 真紀(北里大学)
開催校委員: 野村 忠央(文教大学)
開催校協力委員: 島野 恭平(埼玉県立春日部工業高等学校)
 
◆11:00~12:30 役員会(14503教室) 司会:会長 野村 忠央(文教大学)
役員の方々はご出席をお願い申し上げます。
 
◆12:00 受付開始(14501教室)
 
◆12:50~13:15 総会(14501教室)
  司会:事務局 渋沢 優介(東洋大学非常勤)
総会では役員、一般会員を問わず、多くの会員の皆様のご出席をお願い申し上げます。
 
◆13:20~13:30 開会の辞(14501教室) 会長 野村 忠央(文教大学)
 
◆13:30~15:40 〈シンポジウム〉(14501教室)
  〈専門領域横断的シンポジウム〉
  「中学・高校の現場と英語教育学、英語学との往還」
  (※シンポジウムは130分:発表95分+質疑応答20分+休憩15分です。)
  司会:島野 恭平(埼玉県立春日部工業高等学校)
 英語教育学と英語学は、英語という共通の対象を扱う学問分野でありながら、その目的や方法論において異なるアプローチをとることが多い。それゆえ、英語学における精密な理論的研究は英語教育に指針を与え、また英語教育学の実践的知見は英語学に新たな課題を提示し得るなど、極めて豊かな相互作用の可能性を秘めている。
 今回のシンポジウムでは、改めて英語学の理論的枠組みが、現代の英語教育にどのような光を当て得るのか、英語教育の実践が言語研究にどのように寄与できるのか、さらに、英米文学がもつ物語と文化の力が、英語学習者の学びにどのように作用するのか、フロアーのみなさまと意見交換しながら学び合う場としたい。
 シンポジストは主に中学校・高等学校で日々理論と実践の融合を試みているが、小学校や大学の視点も交えて、対話を深めたい。
 
★「英語教育と英語学における時制観の相違―これまでの変遷とこれからの在り方―」
講師:北島 翔汰(さいたま市立本太中学校)
 日本人学習者が英語を学習する際に直面する困難点の一つに時制が挙げられ、学校現場においても多くの中学生・高校生はこの文法項目につまずく。英語の時制はいくつあるのだろうか。この問いに対する答えは教科書や参考書等によって異なり、英語の時制は2つと主張するものから、12またはそれ以上と主張するものまで幅広く存在する。しかし、この曖昧さこそがつまずく原因の1つになっているのではないだろうか。形式上、英語に未来時制が存在しないのは明白であるが、中学校・高等学校の教育現場においてHuddleston and Pullum(2002)で主張されている過去時制、非過去時制の2時制区分とその名称とが浸透するかは疑問が残る。一方で、12以上の時制(図1)を展開する際には、相を時制に含めて扱ってよいのかという問題が生じる。このように、時制研究は進む一方で、英語学の理論と英語教育における実践面の双方から納得のいく定説は未だに存在しないように思える。そこで本発表では、これまで英語教育において時制及び相がどのように扱われてきたのかを概観し、英語学の知見を元に、理論面と実際の指導面の両方を考慮した時制の分類及び英語教育におけるこれからの時制の扱いについて考えていく。
(図1)
  過去 現在 未来
単純 単純過去形[時制] 単純現在形[時制] 単純現在形[時制]
進行 過去進行形[時制] 現在進行形[時制] 未来進行形[時制]
完了 過去完了形[時制] 現在完了形[時制] 未来完了形[時制]
完了進行 過去完了進行形[時制] 現在完了進行形[時制] 未来完了進行形[時制]
 
★「使用基盤モデルのレンズを通した教材観―認知文法の立場に立つと高等学校の教科書はどのように見えてくるのか」
講師:滝田 裕幸(麻布高等学校)
 中高の英語教師が言語学や英語学を学ぶと、ふだん使用している教科書がどのように映って見えてくるのだろうか。本発表では、発表者がLangacker(1987, 2000, 2008)の認知文法を学ぶにつれて変化してきた教科書の眺め方を1つの事例として紹介したい。
 漫画Peanutsの作者を題材にした英語コミュニケーションⅠ(Crown English Communication 1)の本文中に、[主語+make+目的語+原形不定詞句]というパターンが複数回登場する。例を挙げると、He makes us think of other people.やIt is not because our friend always makes us laugh, but because he always makes us feel good about ourselves.などである。使用基盤モデルの立場に立つ以前は、make単体のイメージ(letとの違いなど)と[使役動詞+目的語+原形不定詞句]のような抽象化した文法知識の両面で捉えていた。しかし、原形不定詞句に高頻度で生じる動詞がfeel, laugh, look, think, wantなど(『Wisdom英和辞典』)であることを踏まえると、[make+someone+laugh]という丸ごと覚えるべき具体的な単位として生徒に提示すべきである。この見方は、高頻度で生じるアクセスしやすいパターンを重視する使用基盤モデルに基づいている。さらに、語彙と文法の連続性という認知文法の観点からしても、上記のように捉えるのが妥当だと言えるだろう。
 本発表では、特定理論の優位性を主張したいのではなく、どのフレームワークであれ、中高の英語教師が言語学や英語学を学ぶことで教材観がどう変わってくるのかをフロアーのみなさまと一緒に検討してみたい。
 
★「現行学習指導要領(高等学校)における「英語コミュニケーション」と「論理・表現」の現状と課題」
講師:松尾 真太郎(筑波大学附属駒場中・高等学校)
 2018年告示の現行学習指導要領(高等学校外国語編)は2022年度の実施から3年目を迎え、今年度の高校3年生は3年間、いわゆる新課程で履修した学年にあたる。本発表では、発表者が今年度担当している高校1年生、3年生の実践報告も交え、「英語コミュニケーションⅠ」と「論理・表現Ⅱ」を中心に、現状と成果、課題と改善策などを幅広く議論したい。
 旧学習指導要領における科目「コミュニケーション英語基礎Ⅰ/Ⅱ/Ⅲ」「英語表現Ⅰ/Ⅱ」「英語会話」が「英語コミュニケーションⅠ/Ⅱ/Ⅲ」「論理・表現Ⅰ/Ⅱ/Ⅲ」に整理された現行学習指導要領では、「聞くこと」「話すこと」「読むこと」「書くこと」の4技能のうち、「話すこと」を「話すこと[やり取り]」「話すこと[発表]」に細分化し、4技能5領域が再構築された。これはCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)の考え方を取り入れたものである。この他、「言語活動のより一層の充実や高度化」、「統合型の言語活動」を取り入れることなどがキーワードとなっている。
 英語教育中心の問題提起にはなるが、英語学や英米文学の視点も取り入れ、英語教育全体を俯瞰し、今後の教育現場の一助となるような発表としたい。
 
 
◆15:50~17:45 〈研究発表〉
 
発表時間は35分:発表25分+質疑応答10分です。)
 
研究発表第1
(14504教室)
 
★15:50~16:25 司会:染谷 昌弘(東洋大学非常勤)
“From Disconnection to Belonging: Milkman’s Journey in Song of Solomon
王 玲玲(神戸大学大学院生)
 Song of Solomon(1977)is the third novel by African American writer Toni Morrison.  It traces the protagonist’s life from birth to adulthood.  Milkman Dead is an African American man who grows up in Michigan in a wealthy family.  However, he is not close to his parents.  Thus, he consistently feels lost and disconnected from his roots.  Milkman then travels to the South to learn about his family’s past, which marks a turning point in the novel.  In Shalimar, Virginia, he learns the story of his great-grandfather, Solomon, who escaped slavery by flying back to Africa.  Besides this, his relationship with Pilate, who has lived her life without concern for wealth or social status, leads him to question his old way of thinking.  These experiences help him understand more about his roots.  This presentation focuses on the protagonist’s journey to explore the role of heterotopic spaces in this novel.  These spaces are often marginalized or excluded from mainstream society and help individuals to reclaim their identities.  Through the depiction of Milkman’s journey, Morrison reveals how spaces can help minorities transform disconnection into belonging.
 
★16:30~17:05 司会:辻川 美和(目白大学)
「『十二夜』におけるAstrology的表現と感情表現の関係性」
伊吹 磨友子(国際医療福祉大学)
 ウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare, 1564-1616)によって書かれた『十二夜』(Twelfth Night; or What You Will, 1600)の登場人物の台詞には当時のAstrologyおよびAstronomy関連の言葉が散りばめられている。『十二夜』のテキストを Microsoft©2016を用いてクリーニングをかけ、語に分割し、松岡和子訳 『十二夜』(1998)、大修館シェイクスピア双書『十二夜』(1987)を参考にAstrologyに関すると思われる語を抽出したところ、‘star(s)’が5個、‘Taurus’が2個、‘welkin’が1個(2個中)、 ‘constellation’が1個、‘moon’が1個、‘equinoctial’が1個、‘melancholy(+god)’が1個(4個中)、‘spheres’が1個見つかり、Act, Scene, Speaker, Gender, Lines, Remarksを項目として表を作成した。Remarksに注目すると、パラケルスス(Paracelsus, 1493-1541)やプトレマイオス(Ptolemaeus, 生没不明)の影響があったことが伺える。また、‘star(s)’に関して言えば、空にある星ではなく‘my star s’(5個中4個)、‘under the star of galliard’と使われており、人間関係が複雑な物語の中で翻弄される登場人物の胸の内を表しているのではないかと考えられる。そこで本発表ではAstrologyの観点から『十二夜』の登場人物の感情を考察していきたい。
 
★17:10~17:45 司会:森景 真紀(北里大学)
「領域統合型言語活動を取り入れた授業の実践と分析―英語を「読んで」「書く」に焦点を当てて―」
松尾 真太郎(筑波大学附属駒場中・高等学校)
 現行学習指導要領(高等学校・外国語科)には「複数の領域を結び付けた統合的な言語活動」という表現が繰り返し見られる。元来、複数の技能を結び付けながらことばを覚えていくという過程は言語習得において極めて自然な流れである。そのことがわざわざ学習指導要領で、具体的な指導例とともに述べられている意味は大きい。
 英語を「読む」「聞く」「書く」「話す」という4技能の組み合わせは、授業者の裁量次第で際限なく言語活動を創出させる。しかし、肝要なのは、授業者として目的をもって、学習者に身につけさせたい英語力から逆算された組み合わせと、その言語活動を授業に落とし込む力ではないだろうか。
 本発表では高校生を対象にした「論理・表現II」の授業において、「読んで」「書く」に焦点を当てた実践を報告する。pre-reading活動を取り入れ、「読んで」「書く」言語活動を継続的に行った授業の成果とその分析を報告する。加えて、理論面の考察を加えるために、先行研究ではどのような領域統合型の言語活動が言語習得において有効だとされているのかまとめ、日本人英語学習者、特に高校生を対象にした英語学習の理論と実践の往還につなげたい。
(本発表は、関東甲信越英語教育学会第48回山梨研究大会口頭発表(2024)の内容を大幅に加筆修正したものである。)
 
 
◆研究発表第2室 (14502教室)
 
★15:50~16:25 司会:鴇﨑 敏彦(日本獣医生命科学大学)
「英語の伝達情報名詞の可算性の変遷に関する通言語的考察」
森部 想水(九州大学大学院生)
吉村 理一(九州大学)
 本研究は、「advice」や「information」など伝達情報名詞における可算・不可算の区別に焦点を当て、諸言語のコーパスと歴史的コーパス分析を通じてその使用の変遷を考察する。
 LLMによって伝達情報名詞を可算・不可算・両方取れるものに分類すると、「可算のみ」・「両方取れる」とされるものが多く、またその分類結果も一定ではない。通常の説明では、この分類は誤りであると考えられる。しかし、LLMは大量の実際の用例を学習しているため、単に「LLMの認識が人間の認識と異なる」と結論づけるのは尚早である。本研究では、境界性や異質性がないものを不可算と捉える説明(Radden and Dirven 2007)に対し、英語で伝達情報名詞が不可算名詞であるのは現代英語の特徴であると主張し、ヨーロッパ諸語や日本語との通言語的比較から、この点を議論する。また、COHAとGoogle Ngram Viewer、OEDから、これらの名詞が英語でもかつて可算名詞として使用されていたことを示し、現在の不可算用法が時代とともに確立されたことを主張する。さらにLLM に対し、英語において不可算になった伝達情報名詞の共通特徴を説明することで、LLMを英語学習に応用する際の有効な取り入れ方についても検討する。
 
★16:30~17:05 司会:川﨑 修一(日本赤十字看護大学)
「英語句動詞の分析に不変化詞は必要か」 大野 真機(昭和大学)
 近年、英語学習の目的が国際コミュニケーションスキルの習得に重きが置かれる一方、従来の学習英文法が「再検討・再評価」されている(大津 2012)。また言語学的成果の適用により既存の学習英文法の修正・発展が図られるなど(藤田他編 2012、池内他編 2018、八木 2021)、英語教育における学習英文法の再構築と、言語学的妥当性との折り合いの模索が新たな研究動向として注目を集めている。本発表では、「英語学習の効率・効果」と「言語学的妥当性」とのバランスを取りながら、英語学習者にとって有益な新しい英文法のあり方を議論する。具体的には「統語範疇」と「文法機能」の関係を考察し、学習英文法の問題点を整理した上で、言語学的解決策をいくつか提示する。事例として、句動詞分析における「不変化詞」を取り上げる。伝統的な文法の範疇区分について、Jespersen(1924)は「補部を必要とするのかどうかの区別」および「補部の種類に関する選択制限」を認めれば、副詞、前置詞、そして接続詞は統一的に不変化詞として一括することができると主張した(cf. Emonds 1976, Huddleston and Pullum 2002, Aarts 2011)。しかし、こうした「自動詞的な前置詞分析」には代案も考えられる。例えば、十分な根拠があるのであれば、“自動詞的な”前置詞に後続する「音形を欠く要素(implicit argument)」の仮定も排除されない。また、ある種のものは「(前置詞でなく)接置詞」として分析できるのであれば,その場合補部は前置詞の左側にも出現可能なことから(e.g., Injuries notwithstanding, the tennis player won the match.)、前置詞に自動詞的なものを認める必要はなくなるかもしれない。これら議論をとおして、言語学の概念・道具立ては学習英文法にどのような形でどの程度に歩み寄り、貢献できるのかを追究する。
 
★17:10~17:45 司会:川﨑 修一(日本赤十字看護大学)
「結果状態を表す句を伴うWay構文の意味的特徴について」
金澤 俊吾(高知県立大学)
 Way構文は、基本的に主語の指示対象による困難性を伴う移動の様子を表す(例:make one’ s way to the doorなど)。移動以外にも、主語の指示対象が行う動作の推移を表す事例(例:She drank her way through a case of vodka.(Goldberg 1995: 204)など)や、形容詞句が動作の結果状態を表す事例(例:eat one’s way healthyなどcf. Cervel(2017))がある。
 本発表は、Way構文において、動詞eatが、「食べる」動作の結果状態を表す形容詞句または前置詞句と共起する事例(例:eat one’s way healthy / happy / thin; eat one’s way to health / to happiness / to obesity / to deathなど)を中心に意味的特徴を考察する。その上で、二つの当該事例の形成の規則性に関して、各句による結果状態と「食べる」動作との時間的関係に注目し、形容詞句、前置詞句を伴う結果構文の先行研究を援用することにより、説明を試みる。
 
 
研究発表第3
(14501教室)
 
★15:50~16:25 司会:佐藤 亮輔(北海道教育大学札幌校)
「仮定法条件文についての考察」 森 創摩(千葉工業大学非常勤)
 Dancygier(1998)は条件構文(If p,(then)q)の分類として「予測的条件文」(predictive conditionals)と「非予測的条件文」(non-predictive conditionals)を認めている。予測的条件文と非予測的条件文の違いは、p に「後方転移」(backshift)が起こっているか否かで、p に後方転移が起こっている条件文を予測的条件文、後方転移が起こっていない条件文を非予測的条件文という。予測的条件文と非予測的条件文の特徴として、予測的条件文は仮定法にすることができるが、非予測的条件文は仮定法にできないとされている(予測的条件文である(1)と非予測的条件文である(2)を比較参照されたい)。
(1) a.   If it rains, the match will be canceled.
  b.   If it rained, the match would be canceled.
  c.   If it had rained, the match would have been canceled.
(Dancygier 1998: 25)
(2) a.   If you are hungry, there are biscuits on the sideboard.
  b. # If you were hungry, there would be biscuits on the sideboard.
しかし、(3)のように、非予測的条件文でも仮定法にすることができる例がある。(3b)のBの発話では(3a)が仮定法で使用されていると言える。
(3) a. If you are going to Bath, I can give you a lift.
(Declerck and Reed 2001: 321)
  b. A: “I need a lift to Birmingham.”
    B: “You’re out of luck―I’m going to Bath.  If you were going to Bath(now), I    could give you a lift.  [But, as it is, you’re not.]”
本研究では、どのような条件文が仮定法で使用できるのか(仮定法の射程範囲)を先行研究よりも厳密に規定することを目的とする。本研究では、Mori(2020)の枠組みを援用して仮定法にできる条件文とできない条件文を明確化する。そしてさらに、仮定法はiconicity によって動機づけられていると指摘する。
 
★16:30~17:05 司会:野村 忠央(文教大学)
「使役動詞makeの原形不定詞補文に見られる意味特性とその確立時期について」
村岡 宗一郎(日本大学研究助手)
 現代英語の使役動詞makeはto不定詞ではなく、原形不定詞を補文にとる。英訳聖書におけるmakeの不定詞補文の分布を通時的に調査した村岡(2022)によれば、後期近代英語以降、makeは強制使役のマーカーとして確立すると使役事象の完結性を表す原形不定詞を補文にとる用例が確立し、to不定詞補文をとる用例が消失したという。
 しかし、使役動詞の原形不定詞補文がいつ使役事象の完結性という意味特性を獲得したのかについては、依然として明らかにされていない。そのため、本研究では、同様の意味特性を持つ知覚動詞の原形不定詞補文を調査した Muraoka(2022)の分析に倣い、使役動詞の原形不定詞補文がいつ当該の意味特性を表す表現として確立したのか各種コーパスを用いて調査する。
 そして、本発表では各種コーパス調査の結果を用いて、使役動詞makeは後期近代英語以降、強制使役の意味を獲得すると同時に原形不定詞補文もまた使役事象の完結性を表すようになったこと、そして、両者の意味的結びつきが強化され、使役動詞makeは原形不定詞のみを補文にとるようになったことを実証する。
 
★17:10~17:45 司会:齋藤 章吾(弘前大学)
「動詞の前に生じる代用形soについて」 松山 哲也(和歌山大学)
 英語では、目的語が旧情報的な代名詞であっても、動詞の前に置くことは原則的にできない(I think so. vs. *I so think.)。しかし、(1)のように、この原則に反する実例が散見される。
(1) a. Audrey Seiler is not the victim of crime as she has so insisted, but may now be facing criminal charges herself.
  b. If the plaintiff so desires and the proper officer so allows, the summons itself may be prepared by the plaintiff….(BNC)
この種のsoは、副詞のようにみえるが、動詞の目的語や補語の働きをしている。そのため、基底では各動詞の補部に位置し、表層において動詞の前に移動したと分析される。Quirk et al.(1985)やHuddleston and Pullum(2002)では、この用法に関する記述が不十分である。本研究では、このようなso の用法について、その談話的特徴および統語的特徴をコーパス調査などを通じて記述する。また、これらの特徴を極小主義理論(Chomsky 2021)に基づいて説明することを試みる。
 
 
◆17:50~17:55 閉会の辞(14501教室) 副会長:岩本 典子(東洋大学)
 
 
《大会運営委員会より》
懇親会 18:00〜20:00(14503教室)
  司会:大会運営委員長 川﨑 修一(日本赤十字看護大学)
  大会終了後、学内にて懇親会を予定しております(会費:一般の方4,500円、大学院生・学部生の方2,000円)。参加ご希望の方は出欠票から事前申込をお願いします(申込締切2月15日(土))。どうぞ多くのみなさまのご参加をお待ち申し上げております。
文教大学越谷キャンパスまでのアクセス:
  ・北越谷駅(東武スカイツリーライン、東京メトロ日比谷線・半蔵門線、東急田園都市線(直通乗り入れ))西口下車徒歩約10分
  ※北越谷駅には準急、区間準急、普通が停車します。(快速・区間快速、急行・区間急行は停まりません)
  https://www.bunkyo.ac.jp/access/koshigaya/ もご参照下さい。
当日の昼食は最寄駅前のコンビニ等でお求め頂きご持参下さい。なお、お弁当(1,100円)をご希望の方は2月15(土)までに出欠票からお申し込み下さい。
学会員以外の方々のご参加も歓迎しております。今大会は当日会費を徴収しませんので、事前申込の上、ご参加下さいますようお願い申し上げます。
その他、ご不明の点などございましたら、大会運営委員長 川﨑 修一までご連絡下さい。多数の皆様のご参加をお待ち致しております。