第31回年次大会(2022年)実施報告・発表概要 |
日時: | 2022年3月5日(土)12:50~17:10 |
場所: | オンライン開催 |
大会運営委員長: | 加賀 岳彦(日本女子体育大学) |
大会運営副委員長: | 川﨑 修一(日本赤十字看護大学) |
大会運営委員: | 奥井 裕(和光大学非常勤) |
佐藤 亮輔(高知大学) | |
島野 恭平(埼玉県立春日部工業高等学校) | |
関田 誠(東京電機大学) | |
鴇﨑 敏彦(日本獣医生命科学大学) | |
松本 恵美子(順天堂大学) | |
森景 真紀(東京女子医科大学非常勤) | |
開催協力委員: | 茨木 正志郎(関西学院大学) |
渋谷 和郎(千葉工業大学) | |
染谷 昌弘(東洋大学非常勤) | |
野村 美由紀(大妻女子大学非常勤) | |
大会総合司会: | 森景 真紀(東京女子医科大学非常勤) |
◆11:00~12:30 | 役員会 | 司会:副会長 野村 忠央(文教大学) |
※ | 役員の方々は「役員会参加URL」からオンラインにてご出席をお願い申し上げます。 | |
※ | URLは事前にメーリングリスト経由でお送り致します。 | |
◆12:50~13:15 | 総会 | 司会:鈴木 繁幸(東京家政大学) |
※ | 「本部URL」からご参加下さい。 | |
※ | 総会では役員、一般会員を問わず、多くの会員の皆様のご出席をお願い申し上げます。 | |
◆13:20〜13:30 | 開会の辞 | 会長 渋谷 和郎(千葉工業大学) |
◆13:30〜15:00 | 〈特別講演〉 | 司会:鈴木 繁幸(東京家政大学) |
(※特別講演は質疑応答を含め90分です。) | ||
「私の「英語個人史」を振り返る」 | 会長 渋谷 和郎(千葉工業大学) |
私は中学校の時に英語に出会って以来、英語教師として、また、英語学習者として、数十年に渡り様々な形で英語と関わってきました。英語教師としては、大学受験予備校で10年以上、大学教員としても10年以上英語教育に携わってきました。また、英語学習者としては、これまでに中学・高校・大学の他に塾、予備校、そして海外の語学学校などでも英語を学びました。更に、シンガポール、アメリカ、イギリスに留学する機会にも恵まれ、異なる英語の社会・文化圏で英語によるコミュニケーションも経験することができました。英語教育の研究者としては、第二言語習得研究、特に、言語学習モチベーションという研究分野で日本人学生の英語学習のモチベーションについての研究をしてきました。 |
この講演では、私の「英語個人史」を振り返りながら、英語教師として、そして英語学習者としての様々な経験と、英語教育の研究者としての知見を元に、「英語」、「英語学習」、そして「英語教育」について、様々な視点から私の考えを語ってみたいと思います。 | |
◆15:05~17:00 | 〈研究発表〉 |
(※発表時間は35分:発表25分+質疑応答10分です。) | |
◆研究発表第1室 | ※「研究発表第1室URL」からご参加下さい。 |
★15:05~15:40 | 司会:遠藤 花子(日本赤十字看護大学) |
「Thomas Hardyと「歩行」表象」 | 山内 政樹(千葉工業大学) |
「歩行」という行為は人間の常識的な行動様式としてあまりにも自明視されているので、その歴史的意味合いについてあまり考察されてこなかった。ここで言う「歴史的意味合い」とは、性をめぐる単なる「肉体的行為」が歴史・文化上あらゆる形で表象され、歴史的、文化的意味合いを賦課されてきたのと同様に、「歩行」という行為もまたそのような表象の歴史・文化の中に位置づけられたと見ることも可能ではないかということである。 |
本発表では、発表者がこれまで研究してきたThomas Hardy小説に描かれる「歩行」表象の概要を述べる。そして彼の最後の長編小説「日陰者ジュード」を中心に、「歩行」表象がテクストの中でどのように表象され、機能しているのか、その歴史的・文化的意味合いについて考察を行う。 |
★15:45~16:20 | 司会:野村 忠央(文教大学) | ||||
「日本語と英語の「—とき/when」節それぞれの差異と類似性の分析」 | |||||
近森 藍璃(東北大学大学院生) |
after / before などの時の副詞節の「時の解釈」を見ると、英語では絶対時制が、日本語では相対時制が示されている(本宮 2007)。絶対時制は発話時を基準に決定され、主節と従属節の動詞屈折の一致が求められる。一方で相対時制では時制が文脈によって決定される点を基準とし、主節と従属節それぞれで時制形式的に異なった振る舞いをしうることが観察されている(Comrie 1985)。 |
しかし、日本語の「—とき」節においては、「家を建てる / 建てたとき、のこぎりを使った。」のように絶対時制、相対時制どちらも示す例が存在する(Kaufmann and Miyachi 2011, Ogihara 1999)。また、英語の「when」節はbefore / afterと異なり、相対時制を示すことも観察されている(久保田 1996)。 |
本発表では、日本語の同時性を示すとき節における「る/た」交替や英語の相対時制的な振る舞いから、日本語と英語の「—とき/when」節における時制の類似性や相違はどのように生じるのかに関して説明を与えることを試みる。具体的には、日本語の「る/た」交替が可能なのは発話時を基準とする絶対時制を示しているからだとし、対して英語は主節に依存して基準点がきまっているため相対的な振る舞いを示すと主張する。 |
★16:25~17:00 | 司会:川﨑 修一(日本赤十字看護大学) | ||||
「英語の描写述部の周辺的事例に見られる意味的特徴と形成過程について」 | |||||
金澤 俊吾(高知県立大学) |
英語の描写述部(depictive predicate)において、形容詞は、文末に生起することで、動作が行われる際の主語ないしは目的語名詞句によって示される実体の一時的状態を表す(eat the meat raw/cut the bread hot/cook food freshなど)。 |
また、描写述部を形成する形容詞の中には、while still, whileなどを伴うことで、動作が行われる際の実体の一時的状態もしくは持続状態を強調する事例もある(mash the potatoes while still hot/brush one’s hair while wetなど)。 |
本発表は、while still, whileなどの表現を伴う形容詞述部の意味的特徴と、その形成過程を明らかにすることを目的とする。はじめに、当該表現の意味的特徴を検証し、この種の形容詞述部は、特定の動詞と共起する傾向が強く、描写述部と類似した意味的特徴を有することを提示する。その上で、当該表現は、描写述部の周辺的事例の1つであり、当該形容詞および共起する動詞の語彙的意味の整合性と、慣習化によって形成されていることを明らかにする。 |
◆研究発表第2室 | ※「研究発表第2室URL」からご参加下さい。 | ||||
★15:05~15:40 | 司会:戸澤 隆広(北見工業大学) |
「透明的自由関係節の派生について」 | 平塚 哲郎(東北大学大学院生) |
透明的自由関係節(TFR)とはThere is [what John might call [a banjo]] on his desk. (Schelfhout et al. 2004: 2)のような自由関係節内の小節補部(a banjo)が関係節の主要部として機能する文である。Grosu(2003)は、小節補部から素性を受け取ったwhatが移動し関係節を形成すると提案している。また、Ha(2012)は、主節に横方向移動した小節補部に関係節が付加すると提案している。前者はTFR内部の名詞句が再構築効果を示さない事実を説明できず、後者はTFR内部の要素と小節補部とのc統御関係を説明できない。本発表では、この2つを組み合わせ、小節補部から素性を受け取ったwhatが主節に横方向移動し、そのwhatに関係節が付加すると提案する。これにより再構築効果とc統御関係に関するそれぞれの問題が解決され、より多くの事実が捉えられる。 |
★15:45~16:20 | 司会:西前 明(函館大学) | ||||
「コピー削除のタイミングに関する分析」 | 齋藤 章吾(弘前学院大学) |
本発表は、コピー削除が音韻的現象に対して与える影響に焦点を当て、この削除操作が適用されるタイミングについて分析する。コピー削除は一般的にPF部門の操作として仮定されており、この操作と一部の音韻的現象との相互作用の有無について様々な分析が行われてきた。しかし、それらの分析の間では、コピー削除のタイミングについて意見の一致が見られていない。本発表では、削除対象のコピーが持つ音韻的効果の有無に基づいて、コピー削除のタイミングを分析する。具体的には、削除対象のコピーが特定の音韻的現象に影響を与える場合、コピー削除はその音韻的現象より後に適用される(一方、削除対象のコピーが特定の音韻的現象に影響を与えない場合、コピー削除がその音韻的現象より前に適用される)と考える。また、分析したコピー削除のタイミングを導出する理論の構築も試みる。 |
★16:25~17:00 | 司会:茨木 正志郎(関西学院大学) | ||||||||||||
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本研究の目的は目的語が動詞に先行する、(1)に観察される構文の特徴を論じ、生成文法の枠組みでその特徴に説明を与えることである。以下、本研究では「目的語+動詞構文」と呼ぶ。 |
(1) | a. | One victory does not a revolution make. |
b. | One swallow does not a summer make. |
この構文は現代英語でも生産性の高い構文である(滝沢 2018)。 |
まず、意味的な特徴として、目的語+動詞構文は一般的な事柄を述べることが挙げられる。このため、(2)のように、特定のもの・人物を述べる場合、非文となる。 |
(2) | a. | * | Stone walls did not necessarily this good castle make. |
b. | * | Bravery does not necessarily him make. |
次に統語的特徴を論じる。英語では一般的に動詞と目的語が隣接する必要がある(Chomsky 1981)。しかし、目的語+動詞構文の場合、この条件に従わない。 |
(3) | a. | Formal training does not rapidly a good teacher make. |
b. | Formal training does not a good teacher rapidly make. |
最後に、この構文は元の位置から上位の位置へと移動し、vPの端位置(edge position)へと移動すると主張する。さらに、(2)および(3)に基づき、この移動は数量詞繰り上げ(Quantifier Raising)と類似していると主張する。 |
◆研究発表第3室 | ※「研究発表第3室URL」からご参加下さい。 | ||||
★15:05~15:40 | 司会:佐藤 亮輔(高知大学) |
「v*Pフェイズ再考: ⾃由併合の観点から」 | 作元 裕也(九州大学大学院生) |
Chomsky(2000)以降、生成文法では文の派生がフェイズと呼ばれる計算単位によって進行すると考えられている。一般的にフェイズとして機能すると考えられているものは、CPとv*Pであり、多くの先行研究がCPとv*Pがフェイズである証拠を提示しているが (Chomsky(2000, 2001, 2008), Henry(2012), van Urk(2020), among others)、CPに比べてv*Pがフェイズである経験的証拠は少なく、v*Pがフェイズであることに異議を唱える研究もある(Keine(2017))。v*Pがフェイズを構成している具体的な証拠として、(1)の再構築効果(Fox(1999, 2000), Legate(2003))、(2)の数量詞遊離(McClosky(2000), Henry(2012))がある。 |
(1) | a. | [Which of the books that he1 asked Ms. Brown2 for] did every student1 [_] | ||
get from her2 *? | (Fox 1999: 175) | |||
b. | * | [Which of the books that he1 asked Ms. Brown2 for] did she * give every | ||
student1 *? | (Fox 1999: 174) | |||
(2) | a. | What did he [vP all do on holiday]? | (Henry 2012: 28) | |
b. | What did he [vP all say [CP that he did on holiday]]? | (Henry 2012: 28) |
しかし、Chomsky(2013, 2015)における自由併合のもとでは、移動はフェイズ主要部によって駆動する必要がなくなったため、もし自由併合の考えが正しいならば、(1)と(2)のデータはv*Pのフェイズ性の証拠にはなり得ないことになる。本研究の目的は、このように自由併合の観点からv*Pのフェイズ性を再検討することである。 |
★15:45~16:20 | 司会:関田 誠(東京電機大学) | ||||
「デフォルト格の妥当性とその検証」 | 森竹 希望(九州大学大学院生) |
Chomsky(1981)は音形を持つ名詞句は格を持たねばならないとするCase Filterを提唱した。例えば(1)の文ではWhoとonly one prizeが統語的に格を付与されず、Case Filterに違反するため非文法的だと考えられてきた。 |
(1) | a. | * | Who does it seem to like Mary? | (Chomsky 1981: 175) |
b. | * | It was awarded only one prize. | (Radford 2009: 254) |
しかし、Schütze(1997, 2001)らは統語的に格を与えられない場合、名詞句にデフォルト格が付与されると主張している。例えば(2)はMad Magazine Sentenceと呼ばれるが、主語Herが統語的には格付与されないものの、デフォルトとして対格を得る。 |
(2) | What! Her call me up?! Never. | (Akmajian 1984: 3) |
もしHerが統語的に格を得ないならば、なぜ(2)は(1)と異なりCase Filterに違反しないのかという疑問が生じる。もう一つの問題として、(1)でWhoとonly one prizeにデフォルト格を付与しても、なぜ依然として非文法的であるのかも解き明かされていない。 |
本発表では、広範な言語事実を示しつつ、デフォルト格の必要性を主張する。さらにCase Filterを棄却し、従来Case Filterの違反とされてきた(1)のような文の非文法性を別の観点から説明する。 |
★16:25~17:00 | 司会:三好 暢博(旭川医科大学) |
「主要部-主要部構造のラベル付けの可能性」 | 川満 潤(九州大学大学院生) |
Chomsky(2013, 2015)で提案されたラベル付けアルゴリズム分析では、句と句の併合で形成された集合(XP-YP構造)は、その集合のラベルを特定できないため、インターフェイスで適切に解釈されず、非文法的な文を結果として生じさせる。本発表では、XP-YP構造におけるラベル付けの失敗に加え、主要部と主要部の併合により形成されるHead-Head構造も同様に、ラベル付けの失敗を導くこと主張する。H-H構造によるラベル付けの失敗は、数量詞遊離現象(*The students arrived all.(Bošković 2004: 682))や特定の要素を残留させた話題化(*The FBA would assassinate the king of Ruritania, nobody had expected that.(Radford 2020: 87))が非文法性を示すことを予測し、これらの文に関して、従来述べられていた記述一般化を理論的に説明することを可能にする。さらに、H-H構造において、2つの主要部が共通する素性を有していた場合、ラベル付けの失敗を回避するという可能性を示す。具体的には、前置詞残留やWh移動を伴う文において、当該の現象が観察される可能性を示し、本分析の妥当性を検証する。 | ||||
◆17:05〜17:10 | 閉会の辞 | 常任理事 女鹿 喜治(東洋大学非常勤) | ||
《大会運営委員会より》 | |
■ | 今大会はZoomにて4室に分かれての開催になります。大会前に以下の参加URLを配信いたします。 |
・「本部」 | |
・「研究発表第1室URL」 | |
・「研究発表第2室URL」 | |
・「研究発表第3室URL」 | |
入退室の際は、いったん退室していただき、上記URLから入り直して下さい。 | |
また大会運営委員会の許可がない限り、会員以外の方々へ上記URLを広めることはお控え下さいますようお願い申し上げます。 | |
■ | 一般参加者(本学会の通常会員・学生会員・賛助会員以外)について: |
オンライン開催にあたり、2月26日(土)まで大会運営委員長(加賀岳彦)に会員より推薦・招待があった方を一般参加者とし、大会運営委員会より大会参加URLを提供致します。なお今大会は当日会費(500円)をお支払い頂く必要はございません。 | |
■ | 発表配布資料: |
大会前に学会HPにアップ致します。会員に配信するパスワードでファイルを開いて下さい。なお、本フォルダーは大会終了後に閉鎖させて頂きます。 | |
■ | 大会の録画、配信等はお控え下さいますようお願い申し上げます。 |
■ | その他ご不明の点などございましたら、大会全般に関しましては大会運営委員長加賀岳彦まで、オンライン接続など技術的なことに関しましては大会運営委員佐藤亮輔までお問い合せ下さい。皆様のご参加をぜひお待ち致しております。 |